第14回 耳鼻咽喉科短期滞在手術研究会
平成29年7月9日 グランフロント大阪
会長 細田 泰男
抄録
web ミーティング
米国における短期滞在手術の現状〜The Iowa Otolaryngology Experience
柴田清児ブルース アイオワ大学耳鼻咽喉科
私は関西医科大学を卒業後、同大学耳鼻咽喉科へ入局いたしました。専門医、医学博士を取得後に、博士研究員としてミシガン大学クレスゲ聴覚研究所へ留学いたしました。留学中にアメリカ医師国家資格を取得し、マッチングを経て現在の所属先であるアイオワ大学耳鼻咽喉科にて人生二度目の研修生活を送っております。
ご存知の方も多いとは思いますが、米国では日帰り手術の占める割合が高く、また入院するとしても日本と比較して非常に短期であり、この事実は私も研修当初に驚かされました。また研修修了に近づくにつれ、 各手術の慣習の違いも多岐に渡ることに気付かされます。保険制度の違いを指摘されることもありますが、2014年のオバマケア(米国版国民皆保険)の実施前後で診療体制の顕著な変化はなく、米国におけるDay Surgeryの背景には様々な因子があるものと考えられます。米国と日本の違いや共通点をお示しすることで、本発表が今後の日本における耳鼻咽喉科の短期滞在手術のあり方を再度検討いただくきっかけになれば幸いに存じます。
会長講演
私の鼓室形成術、アブミ骨手術
細田泰男 細田耳鼻科EAR CLINIC
細田耳鼻科EAR CLINICは2000年に豊中で開院(無床)しました。開院直後より鼓室形成術、アブミ骨手術は、近隣の岩野耳鼻咽喉科サージセンター(院長の岩野正先生は、私が関西医大で耳科手術を教わった先輩で、現在はゴルフの先生です)にて一泊入院で行っていました。当初は術後のトラブル(ほとんどがめまい)で退院が延期となる症例など色々ありましたが、次第に予定を逸脱する症例も減り、2009年からは自院にて局所麻酔、日帰り手術を開始し、より快適な手術(患者にとっても医者にとっても)をめざして現在も色々工夫、改良しています。
ESSを日帰りで行う施設はかなり増えてきましたが、鼓室形成術、アブミ骨手術の日帰りは本邦では今でも限られています。しかし、ESSに比較して耳科手術の方が痛み苦しみが少なく、より日帰り手術に向いているのではと感じています。
今回、今まで私の行ってきた工夫の中から、お役に立てそうなものをいくつか紹介させて頂きたいと思います。
一般演題
1、フジタ医科器械製パワーパンチの使用経験
山本英永 茅ヶ崎耳鼻咽喉科クリニック
当院は2015年10月に開院し2016年5月より日帰り手術を行っています。内視鏡下鼻副鼻腔手術ではフジタ医科器械製パワーパンチを採用しております。パワーパンチは細田らによって開発された手術機器で永島医科器械より販売されていましたが、長らく製造中止となっており、2016年よりフジタ医科器械より再開発・販売されることとなりました。永島医科器械製との違いは刃先を360度回転することが出来る点です。デブリッターと比較した使用感ですが、ポリープ切除の切れ味に問題はないものの切除のスピードは遅いと思われます。これは長所であり短所でもあると考えます。またシーカーや吸引管の代わりとして探針として使用することも出来、隔壁などある程度の硬組織の処理も可能であります。また内視鏡の洗浄器具としても使え、小出血時も吸引機能により操作を継続出来ます。特記すべき点は止血ガーゼを入れた時にガーゼを巻き込まずに操作が可能な点です。デブリッターとは使用感は異なりますが安全性も高く安価であり、手術の質の向上に役立つ器具と考えられました。
2、当院で使用する手術支援機器
-ジェットイリゲーションシステムを中心に―
梅田 裕生、細田 泰男、宮澤 徹、藤田 京子
細田耳鼻科EAR CLINIC
当院では、院長細田が開発した手術支援機器を使用し、耳、鼻手術を施行している。昨年紹介したパワーパンチの他、広く全国的に浸透している軟骨接合型人工耳小骨や、ジェットイリゲーションシステムなどである。この様な機器は当院では当たり前のように使用されているが、その有用性は大きいと考える。今回の発表では当院で利用されている鼻用ジェットイリゲーションシステムを中心に使い方使い道などをお示しする。
3、日帰り・局所麻酔下ESSにおける鎮静薬の検討
―塩酸デクスメデトミジンとミダゾラムの併用―
金子敏彦 金子耳鼻咽喉科 Ear & Nose Clinic
塩酸デクスメデトミジン(DEX)は既存の鎮静薬と異なり刺激によって容易に覚醒可能であり,呼吸抑制がほとんど無いという特徴がある。DEXとは異なる作用機序を持つミダゾラムも広く用いられている鎮静薬だが、用量依存性に呼吸抑制の頻度が高くなる。当院では内視鏡下鼻副鼻腔手術を午前・午後診の間に局所麻酔・日帰りで行っている。時間的制約の中で効率良く行う為に安定した鎮静が必要となる。
鎮静レベルはObserver’s Assessment of Alertness/Sedation(OAA/S)スコアを用いて評価した。DEX単独では鎮静が浅い際に、ミダゾラムを0.5mg単回静注し、その後は鎮静レベルに応じて適宜追加した。殆どの症例で良好な鎮静が得られた。
DEXとミダゾラムの併用では、ミダゾラムを減量できるため、呼吸抑制のリスクを軽減できる。DEX単独あるいは、DEXとミダゾラムの併用による鎮静は日帰り・内視鏡下鼻副鼻腔手術を安全に、効率よく行うのに有効と考えられる。
4、汎用デジタルカメラを応用した内視鏡ビデオシステム
榊原 昭 あさひ町榊原耳鼻咽喉科医院(山形市)
耳鼻咽喉科診療へ内視鏡ビデオシステムを導入することは、鼓膜や鼻腔などの詳細な観察、近接下での正確な処置、画像の保存が可能になるなど、メリットが多い。しかし一方では、カメラや光源が高価であることと、機材の大きさ、ケーブルの取り回しの煩雑さなどが欠点となっている。
最近発売されたOLYMPUS AIR A01は、モニターや操作用のダイヤルなどを省いた汎用のレンズ交換式のデジタルカメラであり、撮影条件の設定や画像の確認などは、無線で接続されたiPadやiPhoneなどで行うのが特徴である。これを応用した、安価かつ小型軽量で、操作性と視認性にも優れた内視鏡ビデオシステムを構築し、日常診療に活用している。今回、システムの概要と、得られる静止画、動画を供覧する。
5、保険収載に対応した低コスト内視鏡下甲状腺手術 VANS-3S法
片山昭公 札幌徳洲会病院 耳鼻咽喉科
内視鏡下甲状腺手術は長らく保険未収載のままであったが、平成28年度より保険診療 可能となった。しかし、内視鏡下甲状腺手術において必要不可欠であるエナジーデバ イスの加算は現在認められていない。そのため保険点数上の優位性は相殺され、新規 施設の参入を妨げている要因の一つになっている。そこで人件費や消耗品を含む手術 にかかるトータルコストを抑えるべくVANS-3S(Single Surgeon Surgery)法を開発 した。当科では、患側鎖骨下外側に創部を作成するVANS法による内視鏡下甲状腺手術 を行っているが、VANS-3S法では自主開発のMist-lessリトラクターセットAKRに加え ワンタッチ型内視鏡固定器ロックアームを併用することにより、助手を必要としない 術者一人だけの内視鏡下甲状腺手術が可能となった。また、当科では高コストなディ スポーザブルエネジーデバイスの代わりに圧倒的に安価なリユーザブルエナジーデバ イス:Biclamp 110を用いている。本発表においてBiclamp 110を用いたVANS-3S法 の詳細な手術ビデオを供覧する。
6、ICTを活用した日帰り手術の術後フォローの取り組み
河本光平 かわもと耳鼻咽喉科クリニック
ICTとは「Information and Communication Technology」の略語で「情報通信技術」と訳され、Information Technology(IT)に情報や知識の共有や伝達といったコミュニケーションの重要性を加味した言葉である。医療におけるICTの活用とは遠隔医療がその代表であり、法的な整備がおこなわれて平成30年度の診療報酬改定では遠隔医療に関してインセンティブの付与が検討されている。
耳鼻咽喉科の分野では花粉症治療や禁煙外来などでの導入事例の報告があるが、日帰り手術の術後フォローにおいてICTを活用して実験的に取り組んでみたので紹介する。
7、Only earに対する鼓室形成術 -短期滞在で対応するための工夫-
河野浩万 河野耳鼻咽喉科Ear Surgi Clinic
対側耳が実用聴力のないonly earに対して行う鼓室形成術は、慎重な手術操作がより一層求められるものであり、それを行うこと自体にも議論のあるところである。一方、only earであるが故に、手術成功によって得られる患者の喜びは極めて大きい。当院では、only earに対する手術に関しての理解が十分得られた症例に対しては積極的に手術を行うこととしている。平成24年から平成28年の5年間に手術を行ったonly earは18耳(3.9%)であった。行った術式はI型が7耳、III型が8耳、IV型が1耳、woが2耳であった。術後は、良聴耳の聴力が低下した状態で退院となるため、退院後の患者の不安は少なくない。早期に耳内タンポンを抜去し、補聴器を装用している患者に対しては、術後3日目には補聴器を装用してもらうようにしている。
8、多剤耐性緑膿菌感染を伴う中耳真珠腫に対し手術加療を行った1例
大河内喜久、佐伯忠彦、甲藤麻衣、橋本大
製鉄記念広畑病院 耳鼻咽喉科
多剤耐性緑膿菌(以下MDRP)は緑膿菌に対して抗菌活性を有したカルバペネム系、フルオロキノロン系、アミノ配糖体系の3系統の抗菌薬に対して全て耐性の緑膿菌である。今回、耳漏から多剤耐性緑膿菌陽性の中耳真珠腫に対して手術加療を行った。
症例は36歳、ネパール人男性。既往歴にインドで中耳手術歴がある。左耳漏及び難聴を主訴に当科を初診した。初診時の鼓膜初見で弛緩部から外耳道後壁の陥凹を認めた。耳漏の細菌培養の結果はMDRPだった。側頭骨CTでは乳突蜂巣から鼓室内に混濁陰影がみられた。保存的治療にて耳漏の改善ないため2016年1月左乳突削開術、鼓室形成術を施行した。周術期の抗生剤投与を含めて感染予防についての検討を行ったので報告する。
9、鼓室内皮下組織詰め込みによる鼓膜再生手術での
前上象限切除による低音の聴力改善について
中嶋正人 埼玉医科大学病院 耳鼻咽喉科
演者の施行している、縁を新鮮化した鼓膜穿孔から鼓室内に皮下組織を詰め込むように挿入するのみとする鼓膜再生手術は初回手術単回のみで追加処置のない1年以上経過例(経過観察期間1年~5年7ヶ月、平均1年9ヶ月)345耳中で穿孔閉鎖298耳(成功率86%)、聴力改善(耳科学会基準)304耳(成功率88%)で、フィブリン糊など特別な材料が不要で、低侵襲、低コストで術後の投薬や管理も必須ではない、開発途上国でも可能な汎用性の高い方法と考えている。本法の特徴のひとつは手技上、全穿孔でも可能なため鼓膜の保存を考慮する必要がなく、石灰化や菲薄化など鼓膜の不良部分を躊躇なく切除できることである。鼓膜前上象限の石灰化部分の切除で耳小骨連鎖の可動性の改善が可能であることは昨年報告したが、今回石灰化のない鼓膜の前上象限の切除で低音の聴力がパッチテスト結果より平均10dB改善した例を経験したので同例を含め経験例を報告する。」以上です。
10、外来での処置にて管理可能であった軟組織後壁再建後の再発生真珠腫症例
湯浅 有、湯浅 涼 仙台・中耳サージセンター
当院では上鼓室に限局した真珠腫に対し、上鼓室外側壁から後壁を削除し真珠腫を摘出後、皮下結合組織や有茎外耳道皮膚皮弁のいわゆる軟組織にて後壁形成を行っている。文献的には術後形成部の陥凹が生じても陥凹は形成部全体であり、最終的には外耳道削除型を同様の形態となると言われているが実際には形成外耳道の上鼓室外側壁相当部位のみが深く乳突洞方向に陥凹し、同部の清掃や炎症管理が困難となり再発生真珠腫に進展する症例を経験する。しかしその場合でも、陥凹せず残存している形成後壁は皮膚のみであるため、外来処置での同部皮膚切除により、乳突洞に進展した真珠腫を外耳道に開放することで、再発生真珠腫に対応することが可能となることがある。今回我々は、軟組織にて外耳道後壁を形成した真珠腫性中耳炎の再形成再発例に対し、外来にて対応可能であった2症例を経験したので報告する。
11、当院で施行した局所麻酔日帰り内視鏡単独使用の鼓室形成術(TEES)
馬場 奨、川村 繁樹 川村耳鼻咽喉科クリニック
近年、経外耳道的内視鏡下耳科手術(Transcanal Endoscopic Ear Surgery:TEES)の報告は多く、内視鏡単独や顕微鏡(Microscopic Ear Surgery:MES)併用など多様な議論もある。また当研究会においては、局麻日帰りMESの演題は多くみられるが局麻日帰りTEESの演題は、特に鼓室形成術に関してまだないように思われる。
当院の年間約500例の手術はほぼ鼻・副鼻腔手術(局麻日帰り:8割、全麻1泊:2割)であり、コストの点などからも手術用双眼顕微鏡はなく必然的に内視鏡のみとなり、症例は限られるが最近1年間に耳科手術も全例局麻日帰りで5例程度施行した。
耳後部切開・ツーハンドのMESと、耳内切開・ワンハンドのTEESを比較したとき、必ずしもTEESが低侵襲と考えてはおらず、患者さんに侵襲の強弱について話すことはない。しかし、他院で全麻入院でのMESの説明で躊躇していても、局麻・日帰り・圧迫包帯不要のTEES、の説明で手術希望される患者さんが多い印象であり、TEESは短期滞在手術に適した術式と考える。
症例提示し、局麻日帰りTEESついて述べる。
12、当院における耳科手術症例の検討
森口 誠 森口耳鼻咽喉科
当院では、外来診察がメインで時間的にも大きなウエイトを占めている。その中で2014年7月より手術を行っているが、病床もないため全例局所麻酔下日帰り手術である。主に耳科手術を行っているが、その内容につき検討を行った。慢性中耳炎の場合、当初は耳後切開にて鼓室内に入り一部外耳道を骨削除してI-Sを確認し周囲を清掃後側頭筋膜を穿孔鼓膜に対してアンダーレイしていた。しかしいかに皮膚切開や骨削除をしないかということが侵襲を抑えることにつながり時間の短縮にもなるため現在は内視鏡下にTMフラップを挙げ耳小骨連鎖の確認と再建を行い、鼓膜は耳珠軟骨を薄切してアンダーレイしている。軟骨膜付き薄切軟骨での再建鼓膜は再穿孔を起こしにくく、傷が外耳道だけですみ、特にケアフリーで再診もタンポン抜去のための1週間後で済むため負担も少ない。内視鏡下耳科手術は当院のようなマンパワーの少ないクリニックでも有用と考えられた。
13、bFGF、自己血清点耳液を用いた鼓膜穿孔閉鎖術
石部 司 いしべ耳鼻咽喉科
シリコンテルダーミス、bFGF、自己血清点耳液を用いた鼓膜穿孔閉鎖術を施行し良好な成績が得られたので報告する。
20耳に対して鼓膜穿孔部をピックで新鮮化後bFGFを浸したシリコンテルダーミスをパッチした鼓膜穿孔閉鎖術を施行した。閉鎖率は80%で閉鎖まで平均71日を要した。2耳に過剰肉芽、3耳に耳漏の副反応を認めた。30耳に対しては自己血清点耳液を浸したシリコンテルダーミスをパッチした鼓膜穿孔閉鎖術を施行した。閉鎖率は83%で閉鎖まで70日を要した。3耳に耳漏の副反応を認めた。11耳に対しては穿孔部をレーザーで新鮮化しbFGFを浸したシリコンテルダーミスをパッチして自己血清点耳液を毎日点耳してもらった。閉鎖率は91%で閉鎖まで61日を要した。レーザー、bFGF、自己血清点耳液を組み合わせる事により閉鎖率が改善される事が示唆された。
14、当院におけるいびき、睡眠無呼吸症候群に対する手術治療の現状
清水 順一、和田 匡史、岸本 麻子、岩野 正
岩野耳鼻咽喉科サージセンター
永井 香織 ながい耳鼻咽喉科クリニック
単純いびき症、睡眠時無呼吸症候群(以下、SAS)に対する耳鼻科医の関与、特に手術治療の適応や効果については未だ議論がある。当院ではWatchpad(PHILIPS社製)を用いてSASの検査をするとともに、いびきの解析を行い治療方針の決定に役立てている。すなわち、周囲が不快と感じる45dB以上のいびきの割合が多い症例や中等症SAS(AHI:15~30)において、口峡部狭小が主原因と思われる症例については軟口蓋形成術を積極的に施行している。鼻閉も強い症例については鼻中隔矯正術や粘膜下下鼻甲介骨切除術といった鼻科手術も同時に施行している。鼻閉改善手術はSASそのものを治癒せしめることはないが、その後のCPAP装用を容易にする。また、軟口蓋形成術はSASの根治には貢献しないが、単純いびき症では改善する場合が多い。
今回、Watchpadの成績を中心に当院における手術治療の現状を報告する
15、岐阜県山間部の耳鼻咽喉科医療過疎地域での日帰り手術の現状
野々田岳夫 ののだクリニック耳鼻咽喉科
平成27年5月に岐阜県郡上市にて日帰り手術に対応できる耳鼻咽喉科を開院し2年ほど経ちました。
この郡上市は人口4万人弱の過疎化・高齢化が進む山間部に位置しています。近くの市民病院には耳鼻咽喉科専門医は1人いますが、手術を行っていません。手術に対応している総合病院までは30~40km離れており、高速道路で30~40分かかります。
開院前に、市民病院院長に「この地域の患者さんは、手術が必要になると大きな総合病院に行くよ。なかなか、手術する患者さんはいないのでは..」と言われました。が、実際に開院してみると、手術適応となる副鼻腔炎、高度な鼻中隔弯曲、真珠腫性中耳炎等々、多数の患者さんがいらっしゃいました。そういった患者さんに手術の必要性について説明すると、ほとんどの方が当院での日帰り手術を希望されます。
今回は、高齢者の多いこの過疎地域で日帰り手術を経験し、問題点・失敗談などを中心に報告する。
16、手術中に麻酔器の流量計が0L/mになった症例
奥田平治 おくだクリニック
川村繁樹 川村耳鼻咽喉科クリニック
83歳の男性が、慢性副鼻腔炎、鼻中隔弯曲症の診断で1泊2日の短期入院手術を受けた。
麻酔は、レミフェンタニル、ミダゾラム、亜酸化窒素、セボフルラン、プロポフォール等を使ったバランス麻酔で行った。
麻酔の維持では、酸素、亜酸化窒素ともに、流量計で3L/mに設定していた。途中より、亜酸化窒素の流量が徐々に下がってくるため、再度、設定をしなおしたが、同様の繰り返しが数回起こるという不安定な時間が約1時間あった。その後、流量計をみると、完全に流量が0L/mになっていた。
麻酔器の異常か、配管の異常か、マニホールド室の異常なのか、判断できなかったが、酸素の流量は安定していたので、亜酸化窒素なしで、酸素+セボフルラン+プロポフォールで麻酔を維持し、手術は無事に終了した。原因や安全対策などを含めて発表する。